The Smithsという青春の残滓

君が泪した歌を忘れてはいけない、君の命を救った歌を忘れてはいけない、とMorrisseyはThe Smithsで歌っていた。

 オレにとってそんな歌は何だろうと考えるまでも無く、そのThe Smithsの曲の数々はまさにそういう歌だった。

 The Smithsは渋谷陽一のサウンドストリートで1stアルバムが紹介され(1984年の事)、その頃パンクを中心に聞いていたオレには、ちょっと軽過ぎるギターロックバンドだったのだけれど、直ぐに夢中になってしまった。曲の良さもあるけれど、歌詞に深く共鳴したのはThe Smithsが初めてのバンドだった。奇妙で、捻くれたモノの見方。孤独で絶望的でそれでいて笑えるような笑えないようなユーモアが込められている歌詞。

 活動期間は1982年から1987年だから、そう長くは無いのだけれど、永遠に輝きを失せない素晴らしいアルバムを数枚残している。

 その中でも1986年に発表された「The Queen is dead」がオレの一番のお気に入り。当時オレは斜里の田舎で浪人中で、いやこの6月の頃は職に就くか進学するか決めかねていた最中だった。高校を卒業したものの、さしたる展望も無い中、部屋にこもりこんな陰々滅々とした歌の数々を聞いていた19歳の初夏。
 
 今でもこのアルバムを聞くと、その時の自分の気持ちがありありと蘇ってくる。どこかに忘れ去られていたような自分の過去は、今もそこにあるわけだ、また思い出してもらう時まで。

 「The Queen is dead」のなかで一番好きな曲は、「There is a light that never goes out」。どこかへ連れていってくれ、何処だって構わない。という歌詞で始まるこの曲は、まさにこんな閉塞感の中にいるオレの気持ちにぴったりだったわけだ。
 結局の所進学して、東京に出てみたものの、孤独には変わりなく、この曲は同じようにオレの心に響いたな。

 「君と一緒ならダブルデッカーバスに轢かれたとしても、それはなんて幸せにみちた死に方なのだろう。」「10トントラックにぺしゃんこにされたとしても、君がそばにいるなら喜びだ」。There is a light that never goes outでMorrisseyはこう歌うのだけれど、この歌にいる君とは、誰でも無い、存在しない想像の中の君。結局の所孤独に暮らす私が、居もしない友達に向けた歌なんだという事に気がついた。この歌のこっけいさ、本当の悲しさはそこにあると思う。

 The Smithsの最後のライブ・ステージがYoutubeで見られる。その中で見られるバンドの演奏は、とても緊張感があり素晴らしいのだが、バンドがもう崩壊寸前な様子をありありと記録されている。
 1stアルバムに収録されている「Still ill」。数年前にノリノリで歌っていたMorrisseyなのだが、最後のライブでは、痙攣した病人か狂人がステージ上をうろつき、パンクバンドのように吐き捨てる様に歌う、そしてバンドメンバーにおまえら全員病んでいるんだと糾弾するかのように向き合って歌う姿が収録されている。ここにはバンドの爆発寸前の臨界点が記録されている。

 The Smithsを久々に聞き直して、20歳前後の事、その時の気持ちが蘇ってきた。30年も経つのに、今もオレはそこにいる。

 そう、ボクは今も病気なのだ。

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by kararachan | 2017-04-08 11:04 | 音楽 | Trackback | Comments(0)
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