Queen Victoriaはいるけど、Kingは何処へ

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 夕食後は女房と何時もお茶をしながら取り留めの無い話をしている。先日女房の口から出た話に、オレは思わずビクッと動きが止まってしまった。オレにとっては忘れて欲しい、辛い記憶の話。オレの女房はなんでも忘れてしまうんで(結婚記念日もオレが言わないと忘れてしまうくらい)、てっきりその事は忘れていると思っていた。

 それは二人の結婚式の事だった。うちらの結婚式は人前式を選び、式と披露宴がそのまま続く形式をとった。その結婚式の入場曲をどうしようか、二人であれこれ候補を出して、結果として入場の曲はThe KinksのVictoria。これはオレが、愛してやまない曲。そして退場の曲は、Carole KingのTapestryに決めた。それは結婚式前日の事で、オーディオセットの前で曲を聴いてお互いに最終的に確認したのだ。

 さて式当日。準備万端調えていざ式場へ。北海道では一般的な結婚式では発起人会をつくり、当日はその人達にあれこれ準備をしてもらうのだが、オレ達の場合は特にそういう事はせず、ただ兄弟・友達に手が回らない事を頼む程度にした。式場の係員から、入場曲と退場曲のCDをちょうだいと言われて、私はそのディスクを持っていった。入場はこのCDの1曲目。退場はこっちのCDの11曲目と指示をした。しばらくするとその係員さんがまた私のところにやってくる。「あのー、この退場曲のCDですけど、ケースだけで、中身が入っていないんですけど.....。」。オレは真っ青になったね。よりにもよって、女房の選択した曲が流れない。オレは思わず家に取りに行こうかと思ったけれども、往復30分以上かかる。これじゃ式に間に合わない。女房に謝りに行くと、彼女は着付けで忙しく、「忘れたんだからしょうがないよ。なんでも良いよ。」とちょっと怒った表情で云った。オレは係員さんに、「曲はまかせるからなんでも良いので、お願いします」と、頼んだ。


 さて、式も全て無事終わり、問題の退場のシーンが訪れた。曲が流れ始める。えええ、なんじゃこれ、ラップが流れてくるぞ! しかもあのクッサーイやつ。「♫一生一緒にいてくれや」。この当時流行っていたラップのヒット曲で、うちらには最も縁遠い選曲。ううう、オレはコケそうになりながらも、参加者が作る人の輪をくぐって退場したよ。きっと顔は嬉しいような、泣きそうな、複雑な顔をしていたと思う。きっと会場にいた人達は、うれし泣きを我慢していると受け取ったに違いない。ああああぁ。人生一つだけ、やり直せるなら、結婚式前夜にもどり試聴したCDをケースにちゃんと戻したい。

 この事は、オレとしてはもう思い出したくない悲しい思い出で、これまで女房との会話でも持ち出さないようにしていたのだ、この10年間。10年間1度もその事を女房は語らないので、彼女はすっかり忘れていると思い、しめしめと思っていたのだが。その話が女房の口から唐突に出てきた。オレは思わず、顔をしかめ「その、その話はやめてくれー」と言ってしまう。女房は「なんで」とあっさりしている。オレはてっきりまだ女房が怒っていると思っていたのだ。この10年間ずっと。
 女房曰く、「怒ってなんかいないよ。そんなこと未だ気にしていたの?」。

 オレは失敗って、ずいぶん後まで引きずるタチなんだよな。たとえ女房からこういわれても。もう今では笑い話になってしまうこんな話でも、そういう話をする時は胸の何処かがチクリと痛む。

 それにしても、「一生一緒にいてくれや」だよ、あああ。あんな歌じゃうちらヤンキー夫婦みたいじゃないか。何が恥ずかしいって、あの曲をうちらが選んだと思われるのが一番恥ずかしい。

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by kararachan | 2017-08-16 22:09 | 音楽 | Trackback | Comments(0)
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