Cold as ice

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 オレが東京で暮らしていた約10年間。オレが北海道出身だと分かると、良く云われた言葉「じゃあ、スキー上手なんだ」。で、オレが「いや、スキーは滑れない」と答えると、坂本龍馬が実は維新の英雄どころか、単なる外国金融資本家のスパイだという化けの皮が剥がされるのを見たぐらいに、驚かれたものだ。
 そう、オレはスキーは滑れない。10歳ぐらいまで親に連れられて数度滑った事があるが、ボーゲン止まり。それ以外滑った事が無い。北海道なのにスキーを滑った事が無いなんて、よっぽどの運動嫌い、文系人と思われる(いや、その通りだが)。
 だが一寸考えて見てくれ。スキーを滑るにはスキー場が必要じゃないか。北海道は山ばかりじゃないのだよ。人が多く住む所は平地。街中に山があって家を出て数分でスキーが滑られるなんて場所は早々ない。東京の人だって、何時間も時間をかけてスキー場に行くじゃないか。子どもの時からスキーを滑られるなんて、そんな山に隣接した僻地の学校、親がスキーが好きで、子ども連れでゲレンデに行くような家庭だけだ。



 その代わりオレはアイススケートは滑られる。大学時代にもし後楽園なんかに誘われちゃったら、みんなの注目を浴びてしまうだろう。腰を低く落とし、上体をリンクと平行になるくらいに前に倒して腕を前後に激しく振って滑走するように滑るスタイルに。いや場違いな本格的なその滑り方に呆れられるに違いない。そうオレのスケートはスピード競技のスケートなのだ。

 北海道東部の平地の学校では(札幌だとか南部の事は知らん)、小学校の冬のスポーツと言えばスケート。オレも7歳の時に無理やりリンクに立たされたよ。先の尖った細い刃のついた靴を履かされて。初めてスケート靴を履かされてリンクに立っても、ちゃんと立てるものじゃない。なんといっても厚さ数ミリの鉄の刃の上に立つのだ。足腰が馴れていなければ、靴を履いた足はハの字に折れて、刃で立つよりはスケート靴の側面で何とか立ち上がっている状態になる。それにスケート靴はゆるゆるじゃ滑られないので、ヒモできっちりと締めつけなければならない。もちろんスケートリンクは屋外の天然の気温を使って氷結されたもの。そうすると足は痛いし、おまけに氷点下5度以下の低気温は薄い革の靴なんか素通しだしで、何だが拷問を受けているようだった。


 そんな状態からはじめたスケート。小学校2年生ぐらいになれば、オレみたいな運動嫌いもそこそこ滑られるようになる。で、その頃から、放課後リンク30周回ってから家に帰るべし、という過酷なお達しが担任から言い渡される。氷点下5°、いや午後の2時過ぎの真冬の北海道は氷点下10°を下回るなんて当たり前。そんな極限状態の中、吹雪でもなければ毎日校庭に水を播いて作ったリンク、1周200m程を毎日滑らされるのだ。
 足は痛いし、鼻水が出ても感覚はないので垂れっ放しで、きっと泣きそうな顔をして滑っていたに違いない。もちろん1月から3月までの体育もスケート。これは苦行だったなぁ。

 そんな訳で、オレみたいな体育嫌いですら小・中学校と9年間もスケートを滑らされたので、スピードスケートが滑られる。こないだ金メダルを取ったあんな選手もきっとこんな風に競技を始めたに違いない。そういう才能のないオレは、あんな風に綺麗には滑られないが、上体を低く折り曲げたあのスタイルでしか滑られない。

 スケートを滑り終わり、靴を脱ぐ。その刃に唾を垂らすと、瞬時に凍ってしまうのが面白かったな。下手に濡れた手でスケートの刃を触ろうものなら、指が凍れてぺったりと張り付いてしまう。無理に剥がすと指の皮が剥がれてしまうぞ。そんな低温下でよくもまあ9年間も滑っていたと思う。ある意味虐待だと思うのだが。
 そんな苦行を苦行とも思わないごく一部の稀な人が、オリンピックみたいな競技の代表に選ばれているわけだよ。今日も地元の中学校のリンクの外周では、40年前のオレみたいな、ペンギンのよちよち歩きスケーティングをしている小学生が滑っている。リンクの内周では上級者が、魔法のように凄いスピードで音もなく滑走している。
 各中学校にえらく上手に滑る生徒がいて、そんな子が帯広や釧路なんかのスケートの強豪校に進学する。そこにはもっと才能の有る選手なんかがいて、そんな本当に数千人に1人の優秀な選手がオリンピックなんかに出たりするわけだよ。オレの同級生にもすごく速く滑る生徒がいたが、そんな奴でもそういう高校に行くと箸にも棒にも引っかからなかった。
 あと、親が土建屋の社長をしていたバカボン息子なんか、誰が見たって端から才能がないのに、10万円もするバイキングとか云う高いスケート靴なんか買ってもらっていた。普通は1万円もしない靴を履いている。そのバカボンはスケートの授業の時に自分のスケート靴の自慢していたなぁ。高い靴を買えば上手滑れるなるわけじゃないのに、勘違いして私立のスケート強豪校に進学して全く芽が出なかった。奴は同級生のパシリをさせられていたなぁ。そんな恥ずかしい話は地元には伝わっていないと思っているのは本人だけ。口にしないだけで、同級生はみんな知っている。今は親の後を継いで社長になんかなっちゃって、えらそうにしているが、奴は高校時代に同級生達に命令されて購買にパンを買いに行っていた。

 ウィンタースポーツは寒くて辛いから嫌いだ。

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by kararachan | 2018-02-20 17:08 | forward | Trackback | Comments(0)
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