大村賢司の「春がいっぱい」でも聴いて、気持ちだけは春になるぞ

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 4月ももう半分が過ぎた。それでもまだ雪が日陰の部分には残っている。農家の畑はまだ凍結していて農作業に入れないそうだ。今年は雪が一寸少なかったから、畑の深くまで凍れたようだ。
 今日は4月14日。1年前にこんな文章を書いていた。今年もクドリャフカちゃんの悲劇を思って泪する。こういう犠牲は忘れてはいけないと思う。人間て勝手だよな。


 まだうちの庭にはクロッカスぐらいしか花が咲いていないが、北海道のオホーツクも、もうすぐ春がいっぱいになる。「春がいっぱい」といえば大村憲司さん。YMOのサポートギターで一般にも知られるようになった彼なんだけど、本来はジャズ、フュージョンの世界の人。で、YMOとの交流で生まれたアルバムが「春がいっぱい」。彼本来の音楽性とずいぶんかけ離れた、ポップなロックアルバムに仕上がっている。これが凄く良くて、オレは中学生の頃からの愛聴盤だった。YMOのどのアルバムよりもこのアルバムを聞いているなぁ。

 この「春がいっぱい」は1981年に発表された。当時のオレの周りの連中はみんなYMOに夢中だった。オレなんかもYMOの真似してもみ上げを剃って「テクノカット」になんかしちゃったよ。多分斜里中学で一番最初にテクノカットにしたのがオレだと思う。何でも誰かが先駆けるド阿呆がいないと、物事って普及しないんだよね。その後男子はみんなもみ上げが無い時代がしばらく続く。

 そんなYMOブームのさ中に出されたこのアルバム、次から次へとYMO本体に、メンバーのソロまで出るもんだから、小遣いの少ない中学生にはなかなか大村憲司のアルバムまでは手が回らない。良いアルバムだと聞いてはいたけれども、聞く機会がなかったんだよな。
 そうしたら、小学生の頃から博物館講座なんかで親しくしていた1年先輩の加藤成史さんがそれを持っていて、貸してくれると言う。この時このアルバムを貸してもらえなければ、きっと一生大村憲司さんの音楽は聴く事が無かったかもしれない。いやオレが聞くべき音は、向こうからやって来るだね。

 レコードを貸してくれた加藤成史さんっていう人は、見た目は飄々として全然ガリ勉タイプじゃないんだけど、物凄く勉強のできる人だった。脳の作りがオレとは違うなんて思った初めての人だよ、彼は。彼は当時北海道の最難関、函館ラサール高校に進学して、その後東京の大学を卒業。そしてNHKに就職。今もNHKでアナウンサーをしている。加藤さん元気かな。こんど彼のラジオ番組を聞いてみようと思う。早朝に番組を持っているんだよね。たまには斜里に帰ってくる事が有るんだろうか?40年ぶりに再会したいものだ。


 この「春がいっぱい」というアルバム、YMOのメンバーが全面参加なんで、まさにYMOっぽいテクノばりばりの音なんだけども、何と言ってもジャズ・ギタリストのアルバムです。大村憲司のギターが前面に出てくると、途端に大村賢司の世界になってしまう。このアルバムを初めて聞いた当時は、とてもテクノしていると思ったんだけどね。改めて聞き直すと、とてもポップなロックアルバムだよなこれは。

 アルバム1曲目はインストなんだけど、雰囲気としてリードギターをキーボードに置き換えたらYMOになっちゃうのかな。そんな感じの曲がIntensive Love Course。春っぽい、わくわくする曲で、清水靖晃のサックスが良い。もうYMOファミリーが総出で、寄ってたかって大村賢司のアルバム制作に協力したって感じだな。

 どの曲もすきなのだが、4曲目のFar East Manは、何だかレイドバックした曲の雰囲気がとても心地良い。大村さんものびのびギターを弾きまくって、そして歌っている。ちっとも上手じゃないのがいいね。
 Andy Summers師匠も1stアルバムで歌声を聞かせているけど、はっきり言って下手。それで懲りたのか、それ以降は歌わなくなってしまったんだけど、その下手さ加減がいい味を出していて、そのアルバム「XYZ」も何度も聞きたくなる作品なんだよね。


 5曲目のKnife Lifeが一番テクノポップしているかもしれない。初期のUltravoxの様に、エレクトロニクスとロックギターが融合していて、オレにはもう堪らなく好きなサウンドだな。前曲から打って変って曲の緊張感がとても良い。この曲をyoutubeで探したら、でてこなかったよ、残念。


 そんで7曲目のThe Defector。オレはこの曲がこのアルバムのベストだと思う。作曲は髙橋幸宏かぁ。そういわれてみれば、幸宏っぽいメロディーだ。あたまから軽快なシンセサイザーで始るこの曲なんだけど、大村さんのギターのバッキング・ギターも非常に聞き応えがある。丁寧で繊細なギターだよな。ギターの音だけ集中して聞いちゃうよ。ああ、こんなギターが弾けたらって思う。これまたYoutubeには音が見つからない。

 髙橋幸宏のドラムが炸裂する、テクノパンクのInaudibleに間を開けずにMapsに突入するのだが、この曲80年代前半のYMOのツアーでも良く演奏されていたんで、YMOファンにもお馴染の曲だ。これまた幸宏の曲か。もうNew Europeans時代のUltravoxなんか土下座して謝っちゃうような音だよな。テクノとニューウェーブが正面からぶつかってキメラになっちゃったって感じのこの音。それにしても、大村さんのギターがかっこよ過ぎる。神経質に細かくリズムを刻み、曲の緊張を高める、だけども歌は何だか下手で緊張が足りない。その温度差が又良い。
 ギターのカッティングと言えば、渋谷陽一がヘビメタギタリストはGang of fourのギターを聴いて出直してこいなんてラジオで言っていたのを突然思い出した。ちょっと待ってくれよ、Gang of four? あんな下手くそなカッティングは、この大村さんのカッティングを聞いて、修業し直せと言いたいね。これぞカッティングギターのお手本だ。


 Mapsで散々暴れたと思ったら、最後はのんびり「The Prince of Shaba」。それまでの緊張が嘘みたいに、春の桃源郷で花満開の花畑で大村さんがギターを弾きまくっているようなこのインスト曲でアルバムを〆る。深く歪んだギター音のソロが堪らなく良いな。

 そんなわけで春なんで、大村憲司さんのこのアルバムを思い出した。これってやっぱり時代が産んだ1つの奇跡だと思うな。もともと大村さんはジャズ畑の人で、このアルバムの前に発表していたアルバム「Kenji shock」なんか、Los Angeles録音で、サポートミュージシャンはTOTOにLee Ritenour。もろアメリカンフュージョン。なのにその次に作ったアルバムは、YMOのお手伝いをした事から、それまでの芸風と全くかけ離れたポップでロックなアルバムになってしまった。人との偶然の出会いがこのアルバムを産んだ。いや、このアルバムを生み出すために、YMOとの出会いが有ったのかもしれない。

 個別の曲は無くても、アルバム全体が有ったのでリンクを張っておこう。これは80年代の傑作アルバムの1つだ。

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by kararachan | 2018-04-15 00:49 | 音楽 | Trackback | Comments(0)
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